④線状・索状陰影
この所見はその名の通り、胸部レントゲンにて「線状」に見える陰
影と、「索状」に見える陰影のことを示しています。線状陰影の方
は、大体の形状が難なく想像できると思いますが、一方の索状陰影
とはどんな陰影なのでしょうか。実は「索」とは、太い縄や綱のこ
とを意味しています。つまり、線状陰影が髪の毛のように細長い陰
影について使う言葉であるのに対し、索状陰影はもっと太い陰影を
指しているというわけです。
胸部レントゲン写真の判定において、この線状陰影と索状陰影は似
たような意味を持つ所見であるため、しばしばセットで語られます
が、両者の区別は数値を用いて行います。一般的には陰影の太さが
2mm未満の細いものを線状陰影、2mm以上の太いものを索状陰影と
表現しています。
そして、これらの陰影の持つ病的意義ですが、ほとんどの場合、以
前、風邪をこじらせてしまったあとや、軽い肺炎などにかかってそ
れが治癒したあと、自分でも知らぬ間に肺の中に出来てしまった炎
症の傷跡のようなものなので、現在は心配がなく、さらに将来的に
も禍根を残すものではないと思っていただいて差し支えないでしょ
う。例えば、外来受診などの機会に胸部CT検査をお受けになった
際、「陳旧性炎症性瘢痕」とか、「炎症後変化」などという問題の
ない所見名が付けられるものは大概、胸部単純レントゲン写真にお
けるこの線状・索状陰影のことなのです。
このため、健康診断の胸部レントゲン写真の結果においてこれらの
所見が指摘されていても、ほとんどが放置可能という判定か、経過
観察という程度の判定になっているのではないかと思われます。
特に線状陰影などは、全くの健常人の胸部レントゲン写真でもしば
しば認められ、肺をパーツごとに小分けにしている線(葉間裂と呼
ばれ、正常な構造物です)が線状陰影として指摘されることもあり
ます。
ただし、医学においてはどんな場合でも「絶対に大丈夫」という言
葉はなく、例外は存在しますので注意は必要です。病的な意味を持
つ線状・索状陰影を呈する疾患としては、気管支拡張症が有名です
が、この場合、診断には胸部CT検査、呼吸機能検査などが必要に
なりますので、所見を見た医師が精密検査の要ありと判定を下した
時は、速やかに二次検査の指示に従ってください。
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